・老人Z HDマスター版

先日ハイビジョンでも放送されてましたけど、今回HD版のDVDが出るってことで、改めて購入しました。もう10年以上前の作品ですが、未だに古くささを感じさせない、大好きな1本です。大友テイストがあふれてます。
ちなみに何年か前に作ったサイトで、大まじめに「老人Z」についての紹介記事を書いたこともあります。読み返すと恥ずかしいですね(笑) 一応載せておきます。



(以下、別サイトの過去ログよりサルベージ)

原作・脚本・メカニックデザイン大友克洋、キャラクター原案:江口寿史作画監督:飯田史雄、監督:北久保弘之、声の出演:松村彦次郎、横山智佐小川真司他。

老人介護問題に対処すべく厚生省が進める「Z計画」。民間企業の協力の下に完成させた成果物、それは介護用ベッド「Z001号」だった。自己増殖機能を持つ第6世代コンピュータによって制御され、完全に自動化された介護機能を搭載し、全く人の手を介さずに寝たきり老人の介護を行うことができる究極のベッド。しかしそれは、介護される側になんら愛情を感じさせない、文字通り機械的なものに過ぎなかった。
その被験者として選ばれたある老人が、ボランティアの晴子の目の前で厚生省の役人に連れ去られる。一度は自分を納得させた晴子だが、ベッドから送られてくる悲痛なメッセージを目にし、老人を助ける決意をする。友人と共に厚生省の施設に忍び込んだ晴子。バックアップするのは、勝手に病室に設置したパソコンを自在に駆使する元気な凄腕クラッカー老人たち。役人に見付かるものの、老人たちが何とか介護ベッドのコンピュータに侵入、動きを制御したかに思えたその時、異変が起こった。寝たきり老人の薄弱な意志を汲み取り、介護ベッド自らが強靱な意志を形成、海を目指して爆走を開始した!



寝たきり老人の妻としての人格を持った介護ベッド。かつての思い出の地へ行きたいと願う老人。必至で追い掛ける晴子たち。クラッカー老人たちの奮闘もむなしく、様々な機械を取り込み増殖したベッドはさらなる暴走を続ける。そしてようやく海に近づいた老人とベッドを待つ運命とは……?
老人介護問題を荒唐無稽なドタバタなギャグで包み、一見問題の深刻さを全く感じさせない作品。おそらく大友克洋江口寿史横山智佐といった名前だけでも、その筋の人たちには充分訴求力があると思われる。しかしぜひとも「アニメはちょっとなぁ」といった一般の人たちや、福祉に携わる人たちにも見てほしい。あまりにも先見性がありすぎた作品だが、今ならきっと理解できるはず。
冒頭で厚生省の役人に語らせた言葉に込められた痛烈な皮肉。それを感じ取れるかどうかで作品の見方自体が大きく変わる。また途中に出てくる元気なクラッカー老人たち。彼らは正に明るい老後の体現なのかもしれない。
もちろん表面的な部分だけでも充分楽しめる。ただそれだけではもったいない。その裏にあえて隠されている意味を探りながら見てほしい。きっとシビアに考えさせられる部分が見付かるはず。決して他人事では済まされないのだから……。