・Jess についての雑感

下に書いた件について、思ったことをつらつらと。引用は全て、下記エントリのリンク先ニュースからです。
小論文自動採点システム、その名も「Japanese essay scoring system」、略して「Jess」(ジェス)と呼称するそうで。入試の「採点」に導入することへの是非や賛否はともかく、日本語文章の自動「解析」という試みとしては面白いと思います。

Jess は、あらかじめ、理想の小論文として全国紙の2年分の社説、コラム計約2000本を記憶し、「学習」している。文の長さ、漢字・かなの比、言葉の多様さ、受動態の割合、接続詞の使い方などの統計分布から割り出し、模範に近いほど高い点数を与える仕組み

とのことなんで、基本部分として上の各項目に対応した解析エンジンが備わってるってことなのかな。まだ試作段階のようですが、複雑な日本語に対し、かなり頑張ってソフト開発に取り組んでるんでしょう。
ただ、こと「採点」に関してはどうなんでしょう。前述の「是非や賛否」ですが、現段階の個人的見解としては、システム的には「是」で、採点への導入には「否」です。

小論文は、従来のペーパーテストではとらえにくい思考力、表現力などを測る目的で導入する大学が急速に増え、文部科学省の調べでは今年春の入試で、86%の国公立大が個別試験に取り入れることにしている。私立大でも実施校が相当数にのぼる。

とのことですが、この小論文の導入目的と自動採点って、相反してませんか? 独自のアレンジをせず、とにかく音程が外れなければ高得点になる(ように思える)採点機能付きのカラオケみたく、独自の「思考力、表現力など」を排除し、無難に小さくまとまった小論文の方が、システム的にはウケるんじゃないでしょうか。もちろん例文のサンプリングや解析エンジンのチューニングによって変わってくるでしょうけど、いずれにしても統計的に見て「標準」に近いものが高得点なわけですよね、きっと。

小論文は評価が難しく、複数の採点で判定するなど時間、労力の両面で大学側の負担が重いため、受験生の多い学部は導入を見送っているのが実情

だそうですが、だからといってこういうシステムを取り入れるとするなら、そもそも小論文なんて必要ないと思うんです。仮にも個人の「思考力、表現力などを測」ろうとするんですから、「時間、労力の両面で大学側の負担が重い」のも当たり前でしょう。それを解消するために画一的なソフトによる採点を導入するくらいなら、むしろ「採点が大変だから、うちはマークシートの試験しかしませーん!」って開き直るとかね、その方がまだ分かりやすい。
と、入試の採点への導入に対しては否定的な文章を書きましたが、システムとしての今後には期待してます。

日本語の文章は、接続詞を省くなど特有の言い回しがあり、起承転結をつかみにくい。Jess の実用化には、こうした難解な表現を読みこなす能力が欠かせず、長い文章をコンピューターで短くまとめる文書自動要約の技術を応用するなどの研究が続いている

そうなんで、頑張ってください。
あと、こんなことを書きつつ、じゃあ採点に使わず何に使うんだって言われると、すいません、正直現時点で意見はありません。ただ純粋に、研究自体は面白そうだと思ったもので。